ぴくしぶ投稿済『天の女王と鏡の幻想』
初出.5
トリデラ終盤ストーリーつれづれ話:詳しい前書きは〈その1〉へ。
夢を追う彼女とそれを見守る者。そのままでいられれば、それでよかった。
……そのままで、いられる訳がなかった。
デデデ妄想と書いてデデデ無双と読む(笑) 最初から書いていたシーンだけど、読み返すとちょっとセリフが恥ずかし…。 大王さまには夢をいっぱい詰め込めるから素敵だ。
メインはやっぱり、タラ側からなのかセク側からなのか曖昧な、タラセクなんですが、書きたいのは『勇者たち』だったり。…肝心の主人公の影薄いなー…。
今回の主な創作部分:女王になるよりも過去の話。『あやつりの秘術』および『あやつりの魔法』についての、独自解釈が強いです(こうだったらいいな的な)。 あと、“3人目” 。
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5.人々に勇気を与える者の名を、『勇者』と呼ぶのなら
『…お前は、いつか、自分の身体が…奪われてしまうとは、考えないのか?』
ある時彼女は、いつまでも自分に付き従うタランザに、そう訊いてきた。
虫の民を統べる女王となるべく、支配者に相応しい新たな身体を能力を探し求めていた時のことだったろうか。
タランザは彼女を振り仰ぎ、からからと笑った。
『アナタが、こんなみすぼらしい小男の身体を好んで奪うとは、思えないのね』
『―――…生きていくためならば、何でもするよ。 “わたし” は…』
返ってきたのは、怖いくらいに本気の表情だった。
タランザは笑いを収め、…その瞳に、見惚れた。
――彼女は、新たな身体に寄生し奪い取ってしまうと、その身体の元の持ち主の事や自分の以前の姿を、忘れてしまうのだと、そう言っていた。
だから、自分が本当はどんな姿をしていたのか、もう思い出せないのだと。……そう、少しだけ寂しげに語る彼女の顔は、昔から、なにひとつ変わっていなかった。
…知っていた。気付いていた。
どんなに寄生を繰り返しても、変わらないものがあることを。
次々に新たな身体を取り込んでいく彼女の、その美しい顔立ちは、まっすぐな眼差しは……たとえ本人が忘れていても、紛れもない、彼女自身のものだった。…その、美しさに…惹かれていた。
昔から、他人よりもほんの少し、欲張りだった。
他人よりもちょっぴり気が強くて、特殊な能力を生まれ持つが故に、いつだって、真剣に生き抜いていた。…真剣に、その欲張りな『夢』を、追い求めていた。
――だから。タランザはあえてにこりと微笑み、答える。
『…うーん。……ここは「どうぞ」と言わなきゃいけないんだろうけれども、でも、そうなると少し困るのね。 だって―――…こんなちっぽけな身体でも… 一度アナタに捧げてしまったら、“ワタシ” ではもう、アナタのお手伝いが何にも出来なくなっちゃうのね。…それは、ちょっとイヤなのねっ♪』
わざとおどけて笑い飛ばすタランザに、セクトニアは戸惑うように眼をしばたたかせ、……ふっと、笑った。
『……… お前は、本当に、物好きなヤツだな……。
……―――でも、』
…どんなに寄生の秘術を繰り返しても、変わらないものがある。
今でさえ……遠い、月明かりの下に、確かに “彼女” が存在することを、感じ取れる。……心だけを、感じられない叫び……タランザは、立ち竦んでいた。
いつから、こんなに弱くなってしまっていたのだろう。
良き国にしようと、孤独な戦いに挑む彼女を…支えたいと願ったのは、そんなにも遠い昔のことだったろうか。
それとも、…この手で、彼女を捕まえてしまっていれば、こんな未来にはならなかったのだろうか。
「……そんなこと、…できるワケが…なかったのね……」
この手は、他者の心を眠らせ、その身体を操るもの……。己の欲望のために他者を使役する、それが『あやつりの魔術師』。
あまりにも大切すぎたから。……この呪われた自分の手で、彼女に触れることなどできやしなかった。
傍で見守るだけで充分だと、己に言い聞かせて。…ずっとずっと、逃げていた。
「……つまりは。
怖かったんだろ。…自分の惚れた相手が、その他人を操っちまう能力も乗り越えて、お前をちゃんと見てくれるって、そう信じてやれる勇気が持てなかったんだろ?
―――分かってんのか? それは、つまりはそいつを…まるで信じていなかった、ってことなんだぞ?」
「…………ッ!!」
静かに、厳しい声で告げるデデデ大王の言葉に、タランザは己の顔を覆う。――でも、耳は塞がなかった。…その通りだったから。
大切にしたいと言いながら、怯えるあまりに遠ざけて。―――裏切っていたのは自分のほうだ。だって、自分から、自分自身さえ信じていなかった。…何も信じていない者を、誰が裏切れる?
縋りついていた “夢” が醒めれば、後には何も残されていない―――。
後悔に打ちのめされ、くずおれるタランザに、見守る天空の民たちは何も言えず。
その沈黙を破ったのは……強く床を打ち付けた、ハンマーの音だった。
「―――夢が醒めたって言うなら……悪夢を見終わったのなら、なら次は、目を覚ませばいいだけだろ!?
後味悪い “夢” なんてなぁ、たらふく食ってもう一回寝て、次にちゃんと起きればいいんだよ! ―――あいつを見ろよ。のんびり寝たいってだけで “悪夢” さえも終わらせた、それを実践しちまったヤツがそこにいるんだぜ!」
月明かりの下、狂った花と化した女王と、今も戦いを繰り広げている者。
「あいつの戦いを間近で見てみろ。あいつは、この星の危機を何度も救ってきた、本物の『勇者』で―――んでもって、このデデデ大王さまの、腹立たしい『ライバル』なんだからな!!」
ぼん、と自分で豊かなお腹を叩いて、大声でどういう訳か自慢気に語るデデデ大王を、ぽかんとして見上げるタランザたち。
その涙が止まった顔を見てニヤリと笑い、大王は―――手を、伸ばした。
「おいタランザ。オレさまをあそこまで連れて行け! あいつだけにいいカッコさせたくないんでな! 嫌だっつっても聞かねぇぞ!!」
「…えっ、……!」
差し出された大きな手のひら。 …迷ったのは、一瞬だけ。
大王の手を、6つの手のひとつでしっかりと握り、立ち上がった。
―――人々に、再び立ち上がる勇気を与えてくれる者。 その者の名を―――
「行くぞ!」
「…まかせるのね!!」
頷き合い、二人は飛び出した。
決戦の地――――
『 … … …
ありがとう。 …お前の言葉は、お前の優しさは、いつだって、わたしの背中を押し……再び、どんな戦いにも負けぬ勇気をくれる……。
…わたしにとっては、お前が、……わたしだけの、『 』だよ―――…… 』
遠く儚い記憶のカケラが、月明かりの下、散ってゆく…… … …
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それは、 “さんにんのユウシャのおはなし” …だったのかもしれない。