2014年3月16日

天の女王と鏡の幻想・4

ぴくしぶ投稿済『天の女王と鏡の幻想』
初出.4

トリデラ終盤ストーリーつれづれ話:詳しい前書きは〈その1〉へ。

 デデデ妄想 と書いて デデデ無双 と読む。……とか言ってみたかったんですけど、大王さまあんまり目立ってないかも知れない。おかしいなー。
 今回の主な創作部分:その鏡の由来。 ディメンションミラーの能力。
タランザの戦闘能力(一応高いつもり)。…ついでに、彼のセリフでの自己評価がやたら低すぎてごめんなさい…(※書いてる本人は彼は魅力ある人だと思って書いてま した(当時) 。)


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4.タランザの見たもの


 身体を抉った傷も癒さないままで、ここまで辿り着くのが精一杯だったタランザは、デデデ大王の顔を見るなり身構える。
 満身創痍な状態にも構わず、あくまで抵抗しようとするタランザに、かつて侍女として彼ともよく顔を合わせていた桜色の花の娘が、今こそは、と呼び掛ける。
「お願いします、タランザさま! わたしたちに力を貸してくださいっ!」
「うるさいのね!! ワタシが、このタランザが、セクトニア様に逆らう訳がないのね!
……セクトニア様が……タランザを…裏切る、ワケ…が……ッ ……」

 様子がおかしいことは、すぐに分かった。デデデ城から連れ出された後も、カービィと戦わされた時も、完全に意識を奪われていた訳ではなかった。自分を操りカービィと戦った後、彼がどうなったのかはデデデ大王は知らなかったが……。
 朧気な記憶の中で、彼はむしろ自分が操られているかのように、強気な態度を見せていたというのに………何より、あのケガは。

「お前のそのケガ。…カービィがやったんじゃないだろう? じゃあお前、いったい、誰にやられたってんだ?」
「…っやめろ…!」

 大王の指摘に、タランザは苦しげに顔を歪め、何かを振り払おうとするように、しきりに頭を振る。


 ……その時、夜空が震えた。


 タランザが開けた穴から、遠く、月に照らされた戦場が見える。

「―――カービィッ!!」
「セクトニア様…!!」
「…………ッ!!!」

 それは、狂える巨大な花の雄叫び。その巨体と比べると、あまりにもちっぽけな小さな姿……だけど、この星の未来を賭けて挑む、真の戦士。二人の、戦い。
 遠すぎる戦場に、デデデ大王は悔しげな舌打ちを洩らす。…視線を移すと、タランザは凍り付いた表情で、眩しい月に浮かび上がる戦場を見つめている……もう、とても戦える状態ではなくなっていた。
「……て、…だって……」
 苦悩の声が、夜空に零れる。

「…だって、……あの鏡に……映った、“願い” は……叶う、って……!」

「………鏡?」

 まるで、糸が切れた人形のように。
 タランザは、力無く項垂れた。



 ……鏡は、苦手だった。特に、大きな姿見は。
 自分のみすぼらしい小さな姿を、余すところなく映し出してしまうから。

『―――、…セクトニア様……? …留守、なのね…?』

 おずおずと覗き込んだ、真新しい女王の私室……返答がなかったからそんな気はしていたが、彼女の姿は見えなかった。
 たくさんの贈り物にあふれた部屋の中を、ため息混じりに見回す。

 出来上がったばかりの帝都。―――この浮遊大陸を、一つの国に―――彼女の長年に渡る『夢』が、願いが、ついに叶おうとしていた。

 ……ようやく、王国として、軌道に乗ってきた大切な時期だと言うのに。このところセクトニアは、自室に籠もることが多くなった。
 忙しいのは、解る。……最近、彼女とまともに顔を合わせていないことを、寂しく思うなんて、ただの我が儘だ。
 誰に笑われても、時にただ独り突き放されても、ひたすらに理想を掲げ王の道を進むセクトニアを、ずっと見守ってきた。…だけど今、彼女が築き上げたこの宮殿に、自分の居場所が、なかなか見つけられずにいる…。

 ふいに光が反射して、びくりと身を竦ませる。―――見ると、大きな鏡が、そこに置かれていた。星と翼に飾られた、女王となった彼女に贈られるに相応しい、豪華な鏡だ。
 ――鏡は苦手だ。美しい彼女には似合っても、貧相な自分にはまるで似合わない。…決して、釣り合うことはない……そう、気付かせてしまうから……。

『…最近、ずっと部屋に閉じ籠もってるのは、この鏡…のせい、…なの、ね…?』

 確かそれは、有名なおとぎ話に出てくる鏡をモチーフに造られたモノだと、そう言われていた。―――なのに……。
 なのに。…今、そこに映っているものは、なんだ? … … …



「 … … …未来、永劫…… 美しき支配者たるセクトニア様の隣には、……永遠に、この…タランザが……いる。… … … 」



 ほんの偶然、垣間見た “己自身が望む未来” …―――「映した “願い” を叶える」と言う、不思議な鏡に映し出された、甘く優しい幻想に……酔いしれた。
 ――彼女自身に切り捨てられた、その瞬間まで。


『 ―――使えぬ 愚か者など 要らぬわ……――― 』


 …その時胸を抉ったのは、雷だけではなくて。

 夢は、幻想は、醒めた。
 セクトニアの……セクトニアであった者の叫び声が、夜空に響き渡る。

 もう、タランザにだって分かっていた。…信じていた “未来” は、ただの幻でしかなかったのだということを。
 気付いていなかった時は、何でも出来た。ただただ彼女を信じていればよかった。
 諫める事など考えもしなかった……彼女が王である限り、自分はずっと、彼女の傍に居られるのだから―――そこにある矛盾も、理由も考えず、鏡が魅せた幻想だけを追いかけて。いつしか道を誤っていた事に、気付かないふりをした。
 目の前で、ひとりぼっちで狂っていく彼女の姿さえ、見えないふりをし続けていた…。



 夢を追う者には、皮肉に満ちた現実を。
 夢見ることを怖れる者には、温かく甘美な幻想を。

 …それは確かに、使いようによっては、その人のためになるのかも知れない。だけどそこにあるものは……
映し出すそれは、確かな、悪意。


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鏡が、悪いことをしようとしているのか。結果的に悪いことをしてしまっているのか。
一応、前者だと思ってますが。

 今回は「カービィとデデデとタランザ、そしてセクトニアのお話」というのを目標に、タラセク部分に偏らないよう少し削ろうとしているんですけど…。(それでも主要人物多い)
 あんまりタラセクが長すぎると、デデデやカービィの出番が、唐突すぎるように感じてしまいそうで怖い。
 削った部分は、また別にまとめたいです。