2013年8月31日

[連作:4]夏の…

『夏の終わりと、続く恋』2013年版.4 初稿(ぴくしぶにあるのは2015年版)

《ドロッチェ×カービィ小説 短編》

 続きの続きです。ようやくドロッチェの前にまで来たのに、なぜかチューリンたちと鬼ごっこをすることになったカービィ。…どうしてこうなった。(←2回目)
 前半もそうですけど…個人的な趣味で、ちょっぴりバトルっぽいシーンを入れてしまったのが、余計に長くなった理由だと…解ってはいるんです。でも、すごく楽しかったという(苦笑)
 カービィもっと強いだろ、というもっともなツッコミは、封印しておいて下さいお願いします(←ぉぃ) 一応カービィも手加減してくれてるんですよ。


(4)アイランドアイスで・その2(約3550字)

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  『夏の終わりと、続く恋』(4) ドロッチェ×カービィ

・・・・・ ・・・・・ ・・・・・

 そして始まった微笑ましいバトルを、こっそり笑いを噛み殺しつつ見守っていたドロッチェの元へ、スピンが忍び足で近付いて来た。

「…あのー、団長。…よかったんですか?」

 なんとなく、だが。――スピンは、カービィは団長にあげたかったんじゃ、と気付いていたので、小さな声でそう訊ねてみたのだけれど。ドロッチェはそんなスピンに軽く肩を竦め、ちらり、とカービィたちに視線を戻した。
 …たしかに、わらわらと逃げ回るチューリンたちを手当たり次第にちぎっては投げしているカービィは実に元気そうで、悲しんだり不満があるようには見えない。突然の鬼ごっこも全力で楽しんでいる感が見るだけでも伝わってくる。ついでに言うと、ストロンは開始早々に団長から「今回はお前は参加不可な」と言われたので、そこら辺で寝てしまっていた。
 ドロッチェはカービィやチューリンたちには聞こえないように、密かにスピンに言う。

「カービィの相手はチューリンたちがしてくれる。…悪いが、今のうちに、アジトを整理してきてくれ。見られたら困るものとか、いろいろあるしな」
「…は…い、了解。」

( ――って言うか、アジトに呼ぶのは決定事項なんだ)

 こっそりとそう思ったけれど、口には出さないでおいた。―――団長が楽しそうにしていること自体は、スピンたちにとっても嬉しいことだからである。
 あくまで盗賊団的な意味で、外部に見られたら困るものもあるから、先に整理しに戻る事に異議はない。散らかしっぱなしの私物は倉庫に放り込んでおけばいいし……いやまず最初に取りかかるべきなのは食堂かな……などと、うっかり真面目に整頓計画を立てながら、スピンは自分たちのアジトに向かって歩き出した。
 スピンと入れ替わるように、むくり、とストロンが巨体を起こしてドロッチェを見る。

「団長はどーするんですー?」

 ドロッチェの視線の先では、ちょうどまた一人のチューリンがカービィに捕まり、悔しそうながらも笑顔を浮かべて離脱していく場面が繰り広げられていた。

「オレはチューリンたちを見てる。アジトは頼むぞ」
「…りょーかい~。」

 ちょうど近付いてきたUFOに乗ったドクと顔を見合わせ、なぜだか、ニヤニヤと笑みを浮かべ始める幹部の二人。なんだか不気味な二人の様子に、ドロッチェはちょっと戸惑った顔になって、でも視線だけは鋭く二人を睨みつける。

「……なんだよ?」
「いえー、別に~?」
「では、先に戻っておるからのー。」

 …三人がアジトに戻っていった後、頬を掻きながら、ドロッチェはぽつりと呟いた。

「……あいつらにバレるのも、時間の問題かな…。」

 実は、本人が自覚するよりも前から、彼がカービィに少しずつ惹かれ始めている事に、付き合いの長いこの三人はとっくに気が付いていたと知らないのは、当のドロッチェだけであった。



 おみやげから始まった鬼ごっこは、佳境を迎えていた。
 残るチューリンは、あと三人。妙な所で真面目な性格をしている団長さんの影響か、きちっとフェアプレー精神が行き届いているらしく、一度捕まった者は離脱しておとなしく応援に回っているので、人数に間違いはないだろう。

 残ったメンバーで一番の強敵は、先程から睨み合いを続けている緑色のチューリンだった。チューリンたちの中でも最年長組に属する頭の良い子で、ボムの扱いも上手く、しっかりとカービィから一定の距離を取り続けている。
 雪原と森の境目の地形を上手に利用して逃げ回る緑チューリンと対峙しながら、カービィはすっかりとこの対戦を楽しんでいた。
 とは言え、そろそろ決着をつけたい。ちらっ、と視線を巡らせて、残りのメンバー、赤色ともう一人の緑色のチューリンの位置を確認する。まとまって逃げていたこの二人の方向へと駆け出すと、背後からボムが飛んできた。
 ひょいっと危な気なく爆発を避け、カービィは尚も二人を追う。年長ゆえの責任感か、残されたメンバーたちのフォローに回ろうと、緑チューリンは登っていた木からジャンプして距離を稼ぎつつ、もう一度カービィに向かってボムを投げつける。

 カービィの狙い通りだった。キッ、と足を止めて振り返ると、空中にいる緑チューリンの方へと引き返す。カービィの行動に驚くが、この距離なら先に地面に降りられる、と緑チューリンは油断し―――突然の風とともに予想外に軌道を変えられ、混乱した悲鳴を上げた。
 飛んできたふたつ目のボムを『吸い込み』して飲み込み、同時に吸い寄せた緑チューリンが、体勢を整えられずに地面に落っこちたところへ、カービィは一気に距離を詰める。
「―――捕まえたっ♪」
「……ちゅ、…ちゅうぅぅ……。」
 あえなく捕まってしまい、切ない声を上げる緑チューリンに、にこっ、といたずらっ子的な笑顔を向けて、言う。

「『吸い込み』使っちゃダメだとは、言ってなかったよね?」

 身体も軽く、踏ん張れる程のチカラも持ち合わせていないチューリンたちだから、カービィの『吸い込み』を使えば一網打尽にできる事は分かっていたので、あえてまったく使っていなかったのだが(そもそも「しごいてやってくれ」と頼まれた訳でもあるので)。まあこの位は、能力を活かした作戦、という事で目を瞑ってもらおう。チューリン自体は飲み込んでないのだし。
 さて、とばかりに振り返ると、最後の砦であった年長チューリンがやられてしまい、後に残された二人が、青い顔をしてカービィを見ていた。……ん? 残り、…二人?


―――パンッッ。


「あ。」

 ドロッチェが両手を打ち鳴らし、終了を告げる小気味のいい音が響き渡る。ぽかん、とした視線がドロッチェへと向けられる中、カービィはひっそりと己の頭を抱えていた。
 …しまった。最初のうちは、最後は捕まえる順番に気を付けようと考えていたつもりだったのに、……最後のほうになると、残り二人になったら終わってしまうというルールをすっかりと忘れてしまっていた…。どうやら、忘れていたのはチューリンたちも同じようだが。

「―――お疲れさん。よく粘ったな、お前たち。なかなか見応えある試合だったぞ」

 団長の言葉に、ようやくチューリンたちにも実感が湧いてきたらしい。残った赤と緑の二人が顔を見合わせて、その表情がみるみると明るくなっていく。見守っていたギャラリーからも、ちゅーっっ! と歓声が沸き起こった。
 ドロッチェがカービィを振り返り、ぱちっ、とひとつウインクを送ってくる。

「…という訳で。ありがたくこれは頂いていくぞ、カービィ?」
「は、…はぁーいっ」

 カービィとしてはちょっぴり残念すぎたけれど、チューリンたちは嬉しそうだし、ドロッチェも笑ってるし、何より、自分でも楽しんじゃってたし。これでいいや、という気分になっていた。

「―――おめでとう、二人とも。」
「「ちゅーーっ!!」」

 団長に、カービィからのおみやげの箱を進呈され、カービィにも祝福の言葉を掛けられて、チューリンたちは実に嬉しそうに飛び跳ねていた。
 あー面白かった、と爽やかに呟いて、ぺたりと座り込むカービィ。つい先程、熱いバトルを繰り広げた年長組の緑チューリンが、明るい笑顔でカービィを見上げてきた。

「ちゅー、ちゅうっ」
「え? …ありがとうって、なにが?」

 ――カービィがいると、団長が、すごく楽しそうに笑ってくれるんだ。ポポポアイランズでそう気が付いたんだけど、今でも、やっぱり同じみたい。だからぼくたちは、カービィが来てくれて、嬉しいんだよ。

 幼い子供の率直な言葉と無邪気な笑顔に、どきん、とカービィの胸が再び騒ぎ始める。

「…そ、そう? そんな事もないと思うけどな……あ…」

「―――カービィ、」

 なんだか妙に焦ってしまい、ぱたぱたと手を振り回すカービィの元へ、ドロッチェが近付いて来た。
 周りに居たチューリンたちに「スピンの手伝いをしてこい」と言って先にアジトに帰らせ、少しして、外に残っているのはカービィとドロッチェの二人だけになる。

 ……ふたりきり。

 すぐ傍に立っているドロッチェを見上げて、どぎまぎとしてしまうカービィに、ドロッチェが改めて声を掛けてきた。

「…ぁー……と。…久しぶり、だな」

 こほん、と咳払いをするドロッチェに、ふとカービィは気付く。

( ――ドロッチェ。……もしかして、緊張…してる?)

 団の皆の前では、団長としての意識が強いのか、飄々としていたのに。…そう気付いた途端、カービィはゲンキンにも楽しい気分になってしまった。

「…ひさしぶり。―――キミに、会いたくなっちゃったんだ」

 ドロッチェを見つめて、ごく自然に、微笑んだ。