『夏の終わりと、続く恋』2013年版.5 初稿(ぴくしぶにあるのは2015年版)
※追記:これらの連作5編は『夏の終わりと、続く恋』の初期版です。その後加筆修正したバージョンを、ぴくしぶさんに上げています。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5829640 〈→ぴくしぶリンク〉
《ドロッチェ×カービィ小説 短編》
ドロカビ短編連作、ひとまずこれでラストです。
ラストにしてようやく本筋、と言うか、二人で会話してるだけ…なのですが……。とりあえず、ひたすら甘いので注意してください(汗) 自分なりの『萌え』を思いきり(ノリノリで)詰め込んでみました。自分でも読み返してちょっと頭抱えてしまいそうになるくらいには(笑)
本当に、「カービィ受け」と言うよりはただ「恋をしてるカービィ」目線のお話でしかなくなってしまっていますが…。もし少しでも、面白いと感じて頂けたら。そしてドロカビ好きさんが少しでも増えて下さったら(笑)嬉しいです。
(5)終わらないもの(約3100字)
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『夏の終わりと、続く恋』(5) ドロッチェ×カービィ
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二人だけの会話。
「……変わりは、…ないみたいだな。――あれから、身体の調子はどうだ?」
「へーき、へーき。……そだね、ポポポアイランズから戻ったすぐの頃は、『あれは無効試合だもう一回勝負しろーっ』て、毎日のよーに大王たちに追い回されたりしたけど…一度、大王が夏バテで倒れちゃってからは、平和な日が続いてるかな」
「…お大事に…、と言っておいてくれ」
「はーい」
…くすくす。
少しは緊張もほぐれてきたのか、二人の間に楽しげな笑い声が湧き上がってくる。
「そっちは?」
「…うちはどうも、休暇ボケの激しい奴らが多くてなー…。ようやくそろそろ調子が戻ってきたが、残念ながら『仕事』になるような事は、今のところしていないな」
「そっかぁ…平和だね~。」
「悪かったな…」
なごやかに言葉を交わし合いながら。
自然と思い出してしまうのは、自分の気持ちに気が付いた、あの暑い日のこと。
南の島で過ごした、最後の二日間のこと。
「…ね。」
南の島でのお別れの前に。
芽生えた気持ちを、打ち明けた。
お互いに。
「ボク、…やっぱり、キミが……ドロッチェのことが、好きだよ」
「………オレも、……同じ、だよ」
あれから、少しばかり時間は経ったけれど……二人の心に芽生えた気持ちは、お互い、ちっとも変わっていなかった。はにかみながら微笑むカービィに、照れくさいのかドロッチェは帽子を押さえて眼を伏せる。
…だけど。ずっと、手の届く場所にいて欲しいとまでは思わなかった。星の空を自在に飛び回るその姿を、小さな星たちを率いて暗い宇宙を渡り歩く『旅人』というその姿を、好きになってしまったから。
ただ時々…こんな風に再会して、言葉を交わし、二人で同じ時間を過ごす事が出来たなら……それは、とても幸せなことではないだろうか。
「…だから。その時…また、会いたくなってしまった時は、またキミに、会いに来てもいいかな。」
本当に会えるかどうか分からなくても構わない、その不安定ささえ、次に逢える喜びにきっと変わってゆく。
だって今、ボクの胸の中は、こんなにも“しあわせ”に満たされてしまっているのだから。
( ――この気持ちを……―――キミも、そう思ってくれたら…、…嬉しい)
…それはきっと、とても身勝手な気持ちなのだろう。
でも、こうして誰かを、いつしか特別になっていたたった一人だけの人を『好きだ』と想えることが。そしてその気持ちを、他でもないその人に伝えられることが、今は、それだけで嬉しかった。
軽く帽子を押さえたまま顔を上げたドロッチェの、いつもは鋭く射るようなその眼差しが、今はとても柔らかく優しい光を宿していて。
いろんな表情を、見せてくれるようになったけれど…いつだってまっすぐにカービィを見てくれる、『導き星』のような強く輝く彼の瞳が、とても好きだった。
じっと見上げてくるカービィに、彼は、柔らかい微笑みをその顔に広げて。
静かな声で、言った。
「お前が…、―――お前も、その気持ちを、持ち続けていてくれるなら。
…次に逢う時も、恋人同士だな」
…カービィは眼を見開き、……そして……。
「…………。……なんて顔してる」
ちょっと憮然としたドロッチェの声。はっとして、カービィは思考を取り戻した。…と言うか、どんな顔してたんだろう、ボク。…聞くのが怖い。
そんなカービィの様子に、ドロッチェは眼を逸らしてしまった。
「…恋人と呼ばれるのは……嫌だったか?」
「ぎっ、…ぎぎぎ、ぎゃくっっ!! …逆っ!」
動転して声が裏返ってしまっていたけれど、咄嗟に口走った言葉に、ドロッチェが止まる。驚いた顔で視線を戻してくるドロッチェに、カービィはまたしても言葉に詰まってしまう。
――嫌な訳がなかった。ただ、…恋、をするのも初めてで。
だから、考えてもみなかっただけ。
…ドロッチェを…こんなにも素敵な人を、「恋人」と…呼んでもいい、だなんて。
そりゃあ、カップルという言葉にうっかりドロッチェを思い出したり…とかもしたけれど、改めてそうだと思うとなんだか頭がカーッてしてくるっていうか…。ああ、ダメだ、自分でもなにが言いたいのか全然分かんない…。
まるで言葉が見つけられずに、真っ赤になって慌てまくるカービィ。気付けば、対するドロッチェの顔もすっかり赤く染まっていて、……堪えきれなくなったと言うように、ドロッチェは吹き出した。その笑顔に、カービィはまたも目を奪われる。
笑いながら、ドロッチェはそっとカービィに身体を寄せて、熱い頬に手を添えた。…普段は高い襟と目深に被った帽子に遮られてしまっているけれど、実はすごく綺麗に整っている彼の顔が、ゆっくりと近付く。
重ねられた唇から広がってゆく、甘い甘い味―――。
「……。…カービィ、その。…嫌だと思ったら、言ってくれよ?」
唇が離れて。少し落ち着かなさ気にまばたきを繰り返しながら言う『恋人』の顔を、にこり、と微笑んで見上げる。
「…ううん、…うれしい…よ。―――だから…その……、
こ、…これからも、よろしくね。…ドロッチェ」
…やっぱりなにを言っているのか自分ではよく分かってなかったりしたけれど。でも、ドロッチェは再び、幸せそうに笑ってくれた。
「………こちらこそ。」
そう言って、ぎゅ、と一度強く抱きしめてくれた彼の身体は、とても温かかった。
…すっ、と二人の身体が離れた時には、ドロッチェの顔はもう『恋人』のものから『団長』のものへと戻ってしまっているようだった。
「さて…。…さっきから、呼んでいる声がするし。アジトに戻るか。…カービィ」
まだちょっとぼぉっとしていたカービィに向かって手を差し出しながら、フッ、と普段通りの楽しげな笑みを浮かべる。
「礼、と言うのも何だが、茶でも飲んでいかないか。…前回のと同じケーキでも良かったら、な。…それとも、既にさんざん食べてたみたいだし、もう入らないか?」
「えっ…、そんな、もちろん、食べるよ! ドロッチェ団のくれたケーキ、すっごくおいしかったもん!! 待ってよドロッチェーっっ!」
ドロッチェのいじわるな問いに、慌てて返事をした時には、カービィもすっかりいつもの調子に戻り。ドロッチェの後を追いかけながら、かつて彼らが迷惑を掛けたおわびに、と贈ってくれた、甘くておいしいイチゴのショートケーキを思い出し、顔が綻んでいくのが自分でも分かった。
……そう。気付いていない訳ではなかった。試食会で、ショートケーキにだけ手を伸ばさなかった理由。
覚えていたかった、繋げておきたかった記憶があった。…でもたぶん、もうだいじょうぶ。
だって、きっと、もう“忘れない”から。
唇にほんのりと残る、優しい感触。カービィは口元を押さえ、誰にも見えないように、幸せな微笑みを心に刻み込んだ。
アジトの前で、チューリンたちが飛び跳ねているのが見えてきた。
おやつの時間にはちょっとだけ過ぎてしまっていたけれど、日が暮れるにはまだ遠い。賑やかな出迎えに、大きく手を振って応える。先にケーキを渡された子たちを含めて、皆、団長と客人が到着するのを待ってくれているようだ。
美味しそうな紅茶の香りと、ふんわり甘いいい匂いが、どこからか漂ってきた。
カップ(ル)ケーキは、今回は食べられなかったけれど。
ふわりと甘くとろけるような、きっとケーキよりもふわふわとして優しいそんな未来が、カービィを待っている――――。
(おわり)