2013年8月29日

[連作:2]夏の…

『夏の終わりと、続く恋』2013年版.2 初稿(ぴくしぶにあるのは2015年版)

《ドロッチェ×カービィ小説 短編》

 続きです。今回は特に自己流設定(=妄想)満載でお送りします。
 地下世界および星の扉については、ほぼ私の勝手な解釈で書いていますので、「ここではそういう設定なんだ」くらいの広い心で見て下さるとありがたいです。とりあえず星の扉(に限らずステージ間移動用の扉全般)万能説。(←
 ぽ…ポップスターは「夢を見る」ための星なんですよ!!(と言って世界観そのものに夢を見てばかりなダメな奴ですすみません。)


(2)地下世界へ(約3100字)

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  『夏の終わりと、続く恋』(2) ドロッチェ×カービィ

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「…結局。……食べなかったなぁ、ショートケーキ…」

 ケーキの試食会が終わって、帰り道。
 独りごちるカービィの手には、小さな紙の箱が握られていた。試食会の最後に貰ったものだ。

『みんなー、参加してくれてありがとうねぇ! 最後に、おみやげ。『カップルで食べてねカップケーキ』を配るよぉ~!』
『…最後の最後で、ダジャレかよ』

 呆れた瞳のワドルドゥのクールなツッコミに、あははは、と会場内に笑い声が巻き起こっていた。
 その後、帰る方角は同じだけれど、街に寄ってから帰ると言うワドルディたちと店の前で別れて、カービィはひとり、ちょっと遠回りをしながら家路についていた。

 腕を動かした拍子に、手にした箱の中から、コトリ、と小さな音がした。カワサキの言葉の通り、中にはカップケーキが二つ分、入っているようだ。
 少しだけ風が出てきた昼下り。ふわりと揺れる木々の枝先を見上げながら、思いきり空気を吸い込んでみた。だんだんと涼しく思えるようになってきた風の中に、次の季節が近付いて来る気配を感じ取る。
 プププランドに、実りの秋が近付いていた。…同時に、夏が、遠ざかっていく。
 ぽふん、といっぱいに吸い込んだ空気を弾にして吐き出す。いつの間にか手にした箱を強く握り締めている事に、自分では気付いていなかった。
 高くなってきたような気がする薄い雲を見上げて、軽く眼を瞑る。

 ……きっと もう、夏は終わる―――…。


『――――ずいぶんと長い休暇になってしまったが…、それも、これで終わりだな。…世話になったな、カービィ』

 南の島で過ごした、最後の日。
 お別れの時の彼のセリフが、頭の中で再生される。

 こちらこそ、お互い様だよ。あの時と同じ返答を、胸の内側で呟く。記憶の中の彼は、ふわり、ときれいな微笑みを見せて、赤いマントを翻した。

『――それでは、また会おう!』

 動き始めた飛行船。吹き上げる強い風。鮮やかな赤色が、遠ざかる。…胸の鼓動は、まだ、高鳴ったまま。

 …あの南の島々、ポポポアイランズで冒険していた時。ボクは、今の“ボク”とはいろいろと姿が違っていたりしたけれど。“ボクたち”が彼に会いに行くと、「よく来たな」「頑張っているようだな」と、必ず声を掛けてくれた。そして船を出ようとすると、いつも、「それでは、また会おう!」と言って送り出してくれた。そんな単純なやりとりが、とても…楽しかった。
 そして最後の日も……お互いに休暇という名の冒険が終わり、いつもの日常へと戻るそのお別れの時も、彼は、同じ言葉で旅立っていった。


「…また、会おう…。」

 彼の言葉を、小さな声で繰り返してみる。

 ――会いたい、と、強く思った。なぜだか今、とても、彼に会いたい。

 会えるかどうかも分からない。彼は盗賊であるのと同時に、宇宙を渡る『旅人』だった。一つの所に長く留まることの出来ないその心を、カービィはとてもよく知っている。彼らがポップスターにまだ滞在しているとは限らない……それでも、会いに行ってみよう、と思ったのだ。
 行ってみたいと、強く願う自分の気持ちと、治まりそうにない胸の鼓動。気持ちが高ぶる。いつしか、走り出していた。

「―――ワープスター!!」

 片手を天に掲げ、呼ぶ。今は昼間でも、青い空の向こうには、遠い星々が輝いている。その強い輝きを呼び集め、愛機である星形の乗り物を召喚し、飛び乗った。ちなみにもう片方の手には、試食会で貰った紙の箱がしっかりと握られていた。



( ――でも、どうやって行けばいいんだろう?)

 ワープスターに乗り込んだ事で少し気分が落ち着いたのか、カービィは重要な事実に気付いてちょっと考え込んだ。
 たしか、一緒に行動している間にこっそり聞き出した情報によると、彼らは以前「アイランドアイス」に造った大型アジトが無事に残っていたから、今回もまずはそこを拠点にしている、と言っていた。…そのアイランドアイスがあるのは、このポップスターの『地下世界』。
 カービィも『地下世界』には行ったことがあるとは言え、行きも帰りも騒動続きの上でだったから、改めて考えるとどうすれば行けるのか、よく知らないままだったのだ。
 …前に迷い込んだ時は、デデデ城の一角からだった―――そこまで考えて、カービィはとにかくデデデ城へ向かう事にした。猛スピードで走行するワープスターに乗ったまま。

「…って、て、て、敵襲ーーっっ!?」
「かかかかカービィが、攻めてきましたぁーーーーっ!!」

 デデデ城に勤める兵士たちが、カービィを見て警告というより悲鳴を上げる。しかしその悲鳴も、今のカービィにはほとんど聞こえていなかった。カービィの気持ちに呼応するように、ワープスターはスピードを緩めない。
 お城の中を爆走しながら、カービィは必死に、ずいぶん前に辿った道のりを思い出そうとしていた。……正直に言うと、あの時はとある事件(※ケーキ)にかなり気を取られていたため、何がどうなっていたのか、よく覚えていなかったりする。うろ覚えの記憶のまま、とりあえず一度玉座の間に突っ込み、引きつった顔のデデデ大王にごく短い挨拶だけをして、即座に引き返す。
 …よくよく考えてみたら、一応はプププランドの王様であるデデデ大王ならば、ひょっとしたら異世界への行き方も知っていたのかも知れないけれど。今のカービィには、急がば回れ的な手段を考える余裕がなかったのだった。
 突然Uターンしたカービィに、周りの兵士たちがぎょっとしたように身体を退かせた。カービィは気に掛けた様子もなくそのまま走り出し、とにかく真っ先に目に付いた、地下に向かうらしい階段に突撃する。

 その時、唐突にカービィの周りの空間が、ぐにゃりと歪んだ。これにはカービィも驚いて眼を見開く。そして、目の前に、見覚えがあるような気がする扉が見えた。
「…星の扉…?」
 ワープスターはためらいなく、現れたその扉へと飛び込んでいく。

「うわっ、わ、…さぶっ!?」

 くぐり抜けた、と思った次の瞬間、眩しい光と冷気がカービィを包み込んだ。
 さすがにワープスターを止め、おそるおそる目蓋を持ち上げたカービィは、いつの間にかあたりに広がるその光景に眼を見張った。

 ―――季節に関わりなく、雪と氷に覆われたエリア。…アイランドアイスだった。

 パチパチ、と何度もまばたきしても、当然ながら景色は変わらない。はっとして振り返ると、かつての冒険の際、カービィが『シールスター』を嵌め込んだ『星の扉』が、今は閉ざされた状態でそこにあった。…と、いうことは。
 そぉっとワープスターを発進させ、周囲を取り囲む高い針葉樹よりも上まで飛び上がってみる。開けた視界、晴れた空の光を跳ね返す雪原の中に、ひっそりと佇む赤い色をした建物が見えた。―――その懐かしい赤色に、カービィの胸がまた、どきりと高鳴った。


 …『地下世界』。空の上に入り口があると言う『鏡の国』と同様、惑星ポップスターに属する“世界”の一つ。
 世界のへそと呼ばれる、不定期に大地に開く不思議な穴に巻き込まれた者たちが流れ着く異世界だが、その行き来は、意外と簡単だった。
 いくつかのポイントさえ押さえれば、辿り着きたい、と強く願う事で、扉は開くのだ。ちなみに『地下世界』へ向かう第一のポイントは「地下に向かう道を進む事」。
 …という事実をカービィが知ったのは数日後、この時の暴走についてデデデ大王に呼び出され、盛大な文句(という名の説教)をくらった時だったりするのだが。


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《幕間ひとりごと》
 デデデ大王もすごく好きなキャラなのでつい当たり前のように居る人扱いしてしまってます。しかし出番はこれだけでごめんなさい(汗) セリフすら言う暇なかったし。
 そして次でようやくドロッチェと再会です。やっぱり前振り長すぎるー…(苦笑)