2013年8月28日

[連作:1]夏の終わりと、続く恋

『夏の終わりと、続く恋』2013年版.1 初稿(ぴくしぶにあるのは2015年版)

※追記:ここからの連作5編は『夏の終わりと、続く恋』の初期版です。その後加筆修正したバージョンを、ぴくしぶさんに上げています。
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5829640 〈→ぴくしぶリンク〉


《ドロッチェ×カービィ小説 短編》

 ドロカビなのに、いきなりゲストキャラばっかりでドロッチェがほぼ出てきません。ごめんなさい。
 コックカワサキはアニメ(の声)を参考にぴくしぶりだけれど、よく分からないキャラになっています(汗)
 分割して投稿しているので、割と中途半端なところで終わってます。こっそりと修正する可能性あり。


(1)日常のプププランド(約2300字)

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  『夏の終わりと、続く恋』(1) ドロッチェ×カービィ

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 まだまだ、夏の名残の暑さが抜けきらない、ある日のプププランド。

「…なんだか、いい匂いがする~……」

 のんびりお散歩していたカービィは、ふわりとどこからか漂ってきた甘い匂いに引き寄せられて、町外れへとやって来た。
 見ると、なにやらお店の前に、人だかりが出来ている。確かあそこは、プププランドの名物料理人ことコックカワサキの店。自然と足がそちらに向いたカービィの背後から、よく知った声が掛けられた。

「あっ、カービィ! おはようーっ」
「おはよー。やっぱ、カービィも来たか」

 カービィの家のすぐ近所に住む仲良しの友達ワドルディが、カービィを見つけてぱたぱたと大きく手を振った。すぐ後ろにはワドルドゥもいる。向かう先は同じ店らしく、近付いて来た二人にカービィはにっこりと笑って挨拶をした。
「おはようっ、ワドルディ、ワドルドゥっ! ねぇ、これって、なんの行列?」
「…って、何だカービィ、知らなかったのか?」
 単に美味しそうな匂いに釣られてやって来た、と言うカービィに、大きな瞳に呆れた表情を浮かべて、ワドルドゥが手にしていたチラシをカービィに見せてくれた。興味津々で覗き込むと、そこには…。

「なになに…、…『秋の新作ケーキ、大・試食会!』…ケーキっ!?」

 途端、キラキラと瞳を輝かせるカービィ。
 予想通りの反応に乾いた笑いを浮かべるワドルドゥの隣で、ワドルディが無邪気にカービィに笑い掛ける。
「カワサキのお店でやるんだって。せっかくだし、カービィも一緒に行こうよ!」
「食べる! 行く行く!」
「しかし、今から申し込んで間に合うのか…?」
 きゃいきゃいと騒ぐ二人に、ワドルドゥが不安そうに全身を使って首を傾げる。すると、どこからか現れた話題の主ことコックカワサキが、三人の元にやって来た。
「やぁ、来たねカービィ。妨害でも起こされちゃたまんないから、招待しに行こうかと思ってたところだよ~。特別に席は用意してあるから、暴れないでおくれよ~?」
「やったぁぁっ! カワサキ、ありがとー!」
「いや、今の、喜ぶところか!?」
 なぜだか和やかな空気に、律儀に裏拳ツッコミを入れてしまうワドルドゥだったが、当のカービィは新作ケーキ食べ放題という嬉しい話に浮かれきって聞いていなかった。
 ワドルドゥはため息をついて、ついでだとばかりにカワサキに向き直り、疑問をぶつけることにした。
「でも、カワサキの店でスイーツの特集なんて、珍しいよな?」
「ああ。これはね~ホントは、デデデ大王さまがこの夏に行ったリゾート地でスカウトしてきたっていう新人の、お披露目を兼ねてるんだよ。でも本人、職人気質っていうか、恥ずかしがり屋さんでねぇ~。それで、オレが主催してるってワケなの」
「へぇ~? ああ、チラシに書いてあるな『新パティシエ・デコフワ氏のフワッフワ・デコレーションケーキにこうご期待!』…とかなんとか。この人?」
「そうそう」
 横で話を聞いていたカービィは、なんだかつい最近戦った相手のような気がしてきた。…まあ、裏方に回っているのなら、今日は顔を合わせる事はないだろう。
「―――さてさて」
 カワサキが、ポケットからフライパンとおたまを取り出したかと思うと、ガンガンと打ち鳴らし始めた。店の前に並んでいた人々が振り返る。カワサキはにんまりとした笑みを深めて、愛用のフライパンを高く掲げた。
「じゃ、そろそろ試食会、始めちゃおうかぁ~! 皆、楽しんでいってねぇ~っ!!」


( ――ケーキ、かぁ…。)
 ケーキ。と、胸の内で呟くだけで、甘い何かが己の内側に広がっていく。
 それは生クリームよりもずっとずっと甘く、とろけてしまいそうな…甘く、赤い、色。


「さぁー、どれでも好きなもの持ってってねぇ~っ」
 わくわくした瞳で会場に入り。大量の小ぶりなケーキを乗せたトレーを手にカワサキが現れ、待ってましたとばかりに身を乗り出したカービィは、そこで動きを止めた。
 やはり最初は定番なのだろうか。トレーの一番前に置いてあり、真っ先に目に飛び込んできたのは、ふわふわのスポンジ生地を白い生クリームと真っ赤なイチゴで飾り付けた、イチゴのショートケーキだった。

「―――…カービィ? どうかしたのか?」

 目敏くカービィの様子に気付いたワドルドゥが、すぐ隣から不思議そうに声を掛けてくる。はっとして、目を泳がせるカービィ。
「…えーっと……、…じゃあ、まずは、モンブランっ!」
 ショートケーキの少し後ろに置かれていた、ちょこんと乗った栗が可愛らしいモンブランを手に取り、ほくほくと席に戻ろうとしたカービィに、ワドルディがきょとんとした顔になる。
「あれ? カービィ、ショートケーキは食べないの?」
「そ、そんなことないよ。ただ、今の気分は、この上品な甘さのモンブランかなぁーって思ってっ!」
 内心の汗を隠してにっこりと微笑むカービィに、ちょっと首を傾げてから、二人も自分が食べる分のケーキを取りに行った。…自分でも、なんだか言い訳みたいで変なこと言ったなぁと思いつつ、カービィは手にしたモンブランを味わう。
 新人パティシエの腕前は確かなもので、プププランドの人々にも好評をもって迎え入れられたようだ。試食会は賑やかに進行してゆき、定番から変化球まで、様々なケーキがカービィをはじめ参加者たちのお腹に収まっていった。…が。

 カービィは結局、最後までショートケーキ系にはひとつも手を伸ばすことなく、『秋の新作ケーキ試食会』は終了時間を迎えることとなった。