(表)ドロカビ短編
ドロカビ話の一つなのですが、内容としては「『あつめて』でのドロッチェと勇者の心、そして元に戻ったカービィとの関係性」についての最終的なまとめ、と言えるものなので、ここで挟んでみます。
(珍しく、ちゃんと〆まで書けた話なので、メモ帳のほうに放り込んでます)
※(表)と言っていますが、二人が完全に「恋人としての覚悟を決めた」後の話になるので、とても甘いです。 書いてる奴の趣味です。
ドロッチェとカービィの仲が深まり、やがて二人は大切なひとつの『約束』を交わすことになるのですが、その後、ドロッチェに誘われたカービィがしばらくドロッチェ団の旅路に同行する、別名 新婚旅行編(…笑)と呼んでいるシチュエーションシリーズがありまして。ドロッチェ団の皆と一緒にいくつかの惑星を巡る道中、彼らの所有する宇宙船にお邪魔し、しばし生活を共にするという…。そういう、ドロッチェ団の皆とも仲を深めていくうちに発生した、ある日のお話、です。
まだ展望台にも出してないいくつかの小話を含んで膨らませた話になっているので、話が飛躍してるかもしれませんが…できたら流し読んでください(汗)
ドロッチェ団の宇宙船の中での、ドロッチェの私室に、恋人特権でカービィが勝手に潜り込んでいたという場面から始まります。
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惹かれ合う心 重ねる手
「―――何を笑ってるんだ?」
軽い音を立ててテーブルの上にグラスを並べながら、ドロッチェは軽く睨むような眼つきでカービィを見る。彼のベッドの上に勝手にお邪魔して、にこにこと考え事をしていたカービィが、ドロッチェを見上げてさらに微笑む。
「キミと、恋人同士になれたばっかりの頃のこと思い出したら、なんだか懐かしくって」
「……まだその話題を続ける気なら、追い出すぞ。」
「やーん」
笑いを含んだ悲鳴を上げつつ、カービィはテーブルに近づき、ドロッチェが用意してくれたジュースを手に取った。自分の台詞も冗談とはいえ、相変わらずにこにことしている恋人に、ドロッチェは疲れたため息をつく。
……チューリンの中の数少ない女の子たちが「二人の “なれそめ” を聞きたい」などと突然言い出して、大騒ぎになったのは、つい先刻のことだ。ドロッチェとしては、せめてチューリンたちにはあんまり知られたくないと思っている自分の気持ちを、成り行きとはいえ告白させられて、彼は気恥ずかしさのあまりちょっぴりお疲れモードに入っていた。
ようやく開放されたと思っていたのに、いつの間にやら部屋に入り込んでいたこの恋人は、まだ何か言いたいのだろうか。グラスを持ち上げてジト目で睨むドロッチェに、カービィは「落ち着いてよー」と明るい笑い声を上げる。
「……ちょっとだけ、聞いてほしいんだ」
笑顔のまま目蓋を伏せ、ゆっくりと口を開いたカービィの様子に、ドロッチェも気になったのか、ぐいとグラスを傾けてからカービィの言葉を待った。
「―――さっき言ったのも、全部ホントのことだけど。……本当はね、それよりも前――あの嵐の夜にボクが気付くよりもずっと前から、 “ボクの中の一部” は、もうキミのことを好きになっていたんだよ」
やがて、静かな声で語り出したその内容に、ドロッチェがぴくりと反応する。 ……カービィが、こんな表現をする相手……それは――――
「――――……『勇者の心』…?」
ぽつりと呟いたドロッチェに、カービィは満面の笑顔で、しっかりと頷いた。
「―――やっぱり、ドロッチェは、解ってくれるんだね…」
「………?」
意味を掴みかねて首を傾げたドロッチェに、カービィはどこか、泣き笑いのような表情を浮かべて、言う。
「…彼は、ボクの一部。戦うチカラを弱められたボクたちを導くために、ボク自身が生み出した、魂の一部。…戦いのために、あの時の戦いを乗り越えるために出現した、たったそれだけの存在だった……。…だけど」
――ドロッチェは、あの輝く星の姿を思い出していた。10人もの気ままな旅人を導くことに奮闘していた姿。……カービィたちを上手く導いてやることが出来なくて、薄れていく白い影を見送りながら悔しさにその輝きを震わせていた、…そんな姿に胸を揺さぶられて、声を掛けた。
「だけど、キミは。そんな彼のことを、ボクたちと、ボクたち “カービィ” と何も変わらない扱いをしてくれたよね。―――彼は、それが………すごく、すごーく、嬉しかったんだよ」
戦いが終わった後。無事に元の姿に戻れた記念とメダル集めのお礼だ、と言ってドロッチェが出してくれた小さなケーキの数は、11個だった。
星の輝きのカケラ。生き物ですらないその輝きを、自分たち以外で初めて、ひとつの『人格』として向き合ってくれたひと。――― “ボク” が、彼を好きになったのは、当然のことだったのかもしれない。
ドロッチェはカービィの瞳を覗き込んだ。……ポポポアイランズでカービィと再会した時、その大きな瞳の中には、星の形をした影のようなものが見えていた。
『勇者の心』が自分も “カービィ” の一部なんだ、と語り、彼と彼らすべてを合わせてあの “カービィ” になるのだと気付いた時、瞳の中の星形はカービィから『勇者の心』が飛び出した証なのだと理解した。それを裏付けるように、元の姿に戻ったカービィの瞳には、星の影は見えなくなっていた。
『勇者の心』は、 “カービィ” の中に無事に戻れたのだと、……そう思って安堵した。
カービィはドロッチェを見上げて、にこり、と微笑む。
「彼が――『勇者の心』が、キミのことを好きだったんだ、って気付いて。…ああ、一緒なんだな、って思ったよ。……あの時、ごちゃごちゃになってた “ボクたち” の記憶が、すっきり整理できたのも―――ドロッチェのおかげ、だったりするんだよ?」
元に戻って。10人にも分かれていたカービィたちと『勇者の心』、並列する記憶の統合は、いくら丈夫なカービィでも大変な負担になって、倒れてしまったけれど。…でも、同じ人に惹かれ始めていることに気付いたら、心の底で納得した。すべてが、 “自分” であることに。
「彼は、ボクだ。 そして、ボクも、ボク。 ―――ボクのすべてで、キミが……好きだよ。ドロッチェ……」
「―――カービィ……」
幸せを噛みしめて。瞳を伏せ、頬を染めて想いを告げるカービィの手に、ドロッチェの手が、そっと重ねられた。
……かつて闇から救ってくれた恩人であり、協力者―――……だけどいつの間にか、それ以上の存在として、 “彼” に、心が惹きつけられていた。
それはきっと……10人にも増えたカービィたち、そして『勇者の心』が、しばらく共に行動するうちに…… “カービィ” の、様々な顔を見せてくれた、から。
彼らのすべてが、カービィだった。…その不思議なチカラも含めて、カービィに惹かれ始めた――― そう……確かに、あの輝きが―――…導いてくれたのだろう。
「……カービィ。――と、呼んで…いいよな?」
―――『勇者の心』、なんて呼び方は、ドロッチェには少し気恥ずかしくて。ろくに、その名前を呼んだ事はなかった。――こんなことを気にしたって、今更だけれど。
そんなドロッチェの気遣いが、カービィには嬉しくて仕方なかった。 ドロッチェは、今でも彼を……ひとりの、心を持つ生き物として、扱ってくれている……。
「……うん…!」
『勇者の心』は、カービィの中に戻った。 芽生えた “気持ち” は混ざり合い、一つとなって…――― 今では、こんなにも強い “恋心” となっていた。
愛しい恋人の手を両の手で包み込み、柔らかな頬でそのぬくもりを確かめる。頬ずりしながら、くすっ、とカービィは笑みをもらした。
「――惹かれては、いたけど。キミが、こんなにも大切な大切なひとになるなんて、思ってなかっただろうね」
「…それは、オレも同じだな……」
つられたように笑みを浮かべたドロッチェが一度席を立ち、ベッドに腰掛けていたカービィの隣へと座り直す。近くなったお互いの瞳を覗き込み、空いているほうの手でゆっくりとカービィの頭を撫でてくれたあと、ぎゅっ、と強い力で抱きしめられた。
マントの下にまで抱き寄せられて触れ合った肌から、ドロッチェの鼓動を感じて……カービィは、そっと眼を伏せる。
―――お互いに、惹かれ合い。触れ合って、……恋をして。
大切な約束を、交わした。
愛しいひと。
「―――― 愛している。カービィ 」
「…ボクも、―――愛してる……ドロッチェ――――― 」
キミがくれた約束が、果たされるのは、きっと遥か遠い未来のこと。
…ボクは、その遥かな未来まで――― …この気持ちを、ずっとずっと抱き続けているだろう。
心から、惹かれ合ったひと。―――キミへの、 “恋心” 、を。
・おしまい・
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ドロッチェ側からの勇者の心への気持ち、というのを初めて明確に書いたもの、だったと思う。ドロッチェは完全に、カービィが彼にとって特別な存在になっていることに気付いたのはカービィが元の姿に戻ってから、だったので。
ドロッチェ×勇者の心〔ドロッチェ(→)←勇者の心〕は、ちゃんと「勇者の心がカービィの一部へと戻る」ことができたため、勇者の心が抱き始めていた特別な「こころ(感情)」は、元に戻ったカービィにしっかりと託されました。
勇者の心としての記憶も持ったカービィとして、改めてドロッチェに恋をし(=「元に戻って」の話)、ドロッチェもカービィへの感情を自覚して(=「嵐が過ぎれば」)、二人はお互いを大切な存在として求め合い、今度こそ本当の恋人同士へとなっていく(=「いっしょの時間」)……というのが、ポポポアイランズ編ED後のドロカビ話の流れです。
私にとっての、ドロッチェ×カービィの始まりである「ドロッチェと勇者の心」のお話は、こんな感じ、になりました。 本当に、ドロカビが…大好きです。
〈絵:再録〉心から、キミに 恋をした
※『ドロカビまとめ2018』収録