ぴくしぶ投稿済『長い夜が明ける その時に』 初出
トリデラ「真・格闘王の道」ラストバトルから
『天の女王と鏡の幻想』の番外編のような短編。
ソウル最終戦開始ムービーを何度目かに見た時、ふっと思ったことをお話にしてみました。前フリは無しで、戦闘中から始まります。
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「長い夜が明ける、その時に」
苦痛の叫び。
今、彼女は、朽ち果てた身体の大部分を自ら破り捨て―――その魂だけをもって、再び勇者へと立ち向かう……。
「―――…タランザ。 …いる?」
光うごめく “彼女” の瞳をまっすぐに見つめ、カービィは、そっと声を掛けた。
本当は、彼が、この場にいるのは分かっていた。先程戦いの最中、足場に叩きつけられそうになった時に、ひっそりと支えてくれた見えない糸……その持ち主。
「……ここに、いるのね。」
姿を現さないまま、彼は答えた。
狂った叫び声が、少しずつ薄まってきた闇の空に木霊する。
「…ボクには、戦うことしかできないよ。―――それでも、いいよね?」
静かにそう言い、カービィは大きく跳ねた。残像を引き連れた “彼女” の体当たりを、ぎりぎりで躱す。
耳が痛くなるような叫声が響く中で、タランザの答える声は、不思議な程にしっかりとカービィの耳に届いた。
「―――大丈夫。……彼女は、とても、強いヒトだから。
…彼女は…自らの意志で、ワールドツリーから “分離” した。…これで……もう、あの方を、遠い大地に繋ぎ止めるモノは何もない―――。
後は、解放されしその魂を、浄化するだけ。 ……お願いするのね、『勇者』カービィ。…セクトニア様に、永遠なる…眠りを……」
「……ボクは、勇者なんかじゃないよ。―――戦うことしか知らない。ただの、戦士だ。
―――でも―――ボクが戦うことで、 …たったそれだけのことででも、誰かが、安らぎを取り戻せるって言うのなら……ボクは、戦いたい。」
そう。…信じたとおり、彼女は強いヒトだった。
己を捕らえる生命の鎖を、自ら、断ち切った。
そして、彼女を迎え撃つのは、真の勇者。―――星の空を駆ける者。
セクトニア様。…見えますでしょうか。
貴女のために……花の民たちが、たくさんの花を、集めてくれました。こんなにもたくさんの、貴女に捧げるための花を。
魂がぶつかり合う戦場を見つめながら、タランザは、腕に抱えていた色とりどりの花々を、そっと風に乗せた―――
「帰りましょう、セクトニア様。 貴女の愛した、フロラルドの空へ――――… … 」
風が巻き上がる。彼女のための花々を乗せて。
遥かな大地を脱ぎ捨てて、真に空へ羽ばたく翼を手に入れた、天上の女王の魂と共に。
自ら上げている筈の笑い声さえ、自分には聞こえていなかった。ただ目の前に浮かぶ、小さくも眩しい星の輝きに向かって、がむしゃらに手を伸ばす。
もう他には何も見えない。 何も感じない、わからない――――… …
「―――セクトニア!!」
…これは、声?
小さな星から響いてきた気がする、美しい音色……澄んだ声に、もう出来もしないまばたきを繰り返す。
「セクトニア。……覚えていて。それが、キミの名前―――……」
星がまたたく。――それが微笑みだと、なぜだか理解できた。
星の小さな手の中に、光が集まっていくのが見えた。次の瞬間、朽ちた身体に、鈍い痛みが走る。
身体中から力が抜けていく。…ああ、ようやく眠れるのだと、そう思ってほっとした。
「……おやすみなさい。セクトニア」
いつの間にか自分の周りを包み込んでいた、とても懐かしい花の香りと、どこまでも優しい星の囁きに、身をゆだねて……彼女は、ゆっくりと目蓋を閉じた。
長い長い夜が、ようやく明ける――――……
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セクトニアソウル最終戦の開始ムービー。
カービィと戦うために乗り移った筈のワールドツリーを、自分から、引き剥がしているように見えたのです。苦痛の声を上げながらも、自分の手で引き千切ったように。
もしかしたらそれが、彼女の『魂の救済』の描写なのかな、と感じたのです。
大地に繋がったワールドツリーは、天空の女王にとっては足枷でしかなく。
自らの欲望のために負ったその足枷を、死してなお魂を繋ぎ止める足枷を、砕くための最期の戦い。それに選ばれたのがカービィなのかな、と。
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