2014年3月20日

(story)長い夜が明けるその時に

ぴくしぶ投稿済『長い夜が明ける その時に』  初出

 トリデラ「真・格闘王の道」ラストバトルから

 『天の女王と鏡の幻想』の番外編のような短編。
 ソウル最終戦開始ムービーを何度目かに見た時、ふっと思ったことをお話にしてみました。前フリは無しで、戦闘中から始まります。


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「長い夜が明ける、その時に」



 苦痛の叫び。
 今、彼女は、朽ち果てた身体の大部分を自ら破り捨て―――その魂だけをもって、再び勇者へと立ち向かう……。


「―――…タランザ。 …いる?」
 光うごめく “彼女” の瞳をまっすぐに見つめ、カービィは、そっと声を掛けた。
 本当は、彼が、この場にいるのは分かっていた。先程戦いの最中、足場に叩きつけられそうになった時に、ひっそりと支えてくれた見えない糸……その持ち主。
「……ここに、いるのね。」
 姿を現さないまま、彼は答えた。
 狂った叫び声が、少しずつ薄まってきた闇の空に木霊する。

「…ボクには、戦うことしかできないよ。―――それでも、いいよね?」

 静かにそう言い、カービィは大きく跳ねた。残像を引き連れた “彼女” の体当たりを、ぎりぎりで躱す。
 耳が痛くなるような叫声が響く中で、タランザの答える声は、不思議な程にしっかりとカービィの耳に届いた。

「―――大丈夫。……彼女は、とても、強いヒトだから。

 …彼女は…自らの意志で、ワールドツリーから “分離” した。…これで……もう、あの方を、遠い大地に繋ぎ止めるモノは何もない―――。
 後は、解放されしその魂を、浄化するだけ。 ……お願いするのね、『勇者』カービィ。…セクトニア様に、永遠なる…眠りを……」

「……ボクは、勇者なんかじゃないよ。―――戦うことしか知らない。ただの、戦士だ。
 ―――でも―――ボクが戦うことで、 …たったそれだけのことででも、誰かが、安らぎを取り戻せるって言うのなら……ボクは、戦いたい。」



 そう。…信じたとおり、彼女は強いヒトだった。
 己を捕らえる生命の鎖を、自ら、断ち切った。
 そして、彼女を迎え撃つのは、真の勇者。―――星の空を駆ける者。



 セクトニア様。…見えますでしょうか。
 貴女のために……花の民たちが、たくさんの花を、集めてくれました。こんなにもたくさんの、貴女に捧げるための花を。

 魂がぶつかり合う戦場を見つめながら、タランザは、腕に抱えていた色とりどりの花々を、そっと風に乗せた―――


「帰りましょう、セクトニア様。 貴女の愛した、フロラルドの空へ――――… … 」


 風が巻き上がる。彼女のための花々を乗せて。
 遥かな大地を脱ぎ捨てて、真に空へ羽ばたく翼を手に入れた、天上の女王の魂と共に。





 自ら上げている筈の笑い声さえ、自分には聞こえていなかった。ただ目の前に浮かぶ、小さくも眩しい星の輝きに向かって、がむしゃらに手を伸ばす。
 もう他には何も見えない。 何も感じない、わからない――――… …


「―――セクトニア!!」


 …これは、声?

 小さな星から響いてきた気がする、美しい音色……澄んだ声に、もう出来もしないまばたきを繰り返す。


「セクトニア。……覚えていて。それが、キミの名前―――……」


 星がまたたく。――それが微笑みだと、なぜだか理解できた。
 星の小さな手の中に、光が集まっていくのが見えた。次の瞬間、朽ちた身体に、鈍い痛みが走る。
 身体中から力が抜けていく。…ああ、ようやく眠れるのだと、そう思ってほっとした。


「……おやすみなさい。セクトニア」


 いつの間にか自分の周りを包み込んでいた、とても懐かしい花の香りと、どこまでも優しい星の囁きに、身をゆだねて……彼女は、ゆっくりと目蓋を閉じた。




 長い長い夜が、ようやく明ける――――……




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 セクトニアソウル最終戦の開始ムービー。
 カービィと戦うために乗り移った筈のワールドツリーを、自分から、引き剥がしているように見えたのです。苦痛の声を上げながらも、自分の手で引き千切ったように。
 もしかしたらそれが、彼女の『魂の救済』の描写なのかな、と感じたのです。

 大地に繋がったワールドツリーは、天空の女王にとっては足枷でしかなく。
 自らの欲望のために負ったその足枷を、死してなお魂を繋ぎ止める足枷を、砕くための最期の戦い。それに選ばれたのがカービィなのかな、と。




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