ぴくしぶ投稿済『天の女王と鏡の幻想』
初出.2
トリデラ終盤ストーリーつれづれ話:詳しい前書きは〈その1〉へ。
〈1.〉より少し時間を遡って、ヴァイン戦のシーンから。なのですが出だしの表現につまづいてしまって…うーむ。 書きたいシーンをぽつぽつと書いていっていたら、思ったより長くなってました。
今回の主な創作部分:女王の過去、天空の民と女王の関係など。基本的にセクトニアは本物の王者で、天空の民たちからも慕われていたら嬉しいと思って。
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2.天空の覇者と花々の民
『 …… ならば… 見るがいい。 美しき…この、あやつりの秘術を……!! 』
…いったい、何が起こってるって言うのか―――ようやく頭がすっきりしたと思ったら、目の前にはものすごい形相で睨みつけてくる、うっすらと透けた身体をした女。
はっとする程の美女ではあるけれど、薄れ、崩れかけた身体で、瞳だけが爛々と生気に満ちている。…びびるなと言うほうが無理だ。普段ならいいカッコを見せたい相手だということも忘れ、思わずカービィの背中に隠れてしまっても、罪はないだろう。
突然すぎる出来事の連続について行けず、呆然としていたデデデ大王の耳に、小さな声が聞こえてきた。
「……ヘンだよ。…こんなの…」
見下ろすと、カービィがいつもの無表情のまま、ぽつりぽつりと呟いていた。
「…あのヒト……。…何を、望んでいるんだろ…?」
状況がいまいち飲み込めていないデデデ大王に、答えられる訳もなく。
さらに追い打ちを掛けるように、今度は足元から突き上げるような揺れを感じる。みるみるうちに迫り上がってきた幾本もの蔦が、眩しい程に差し込んでいた月明かりを覆い隠し、二人は薄暗闇の中に取り残されてしまった。
「…あの方の能力は、他者に寄生し、そのチカラを自分のモノとすること。
そうやってセクトニア様は、このフロラルドの女王となられました」
突然背後から聞こえてきた声に驚いて振り返ると、この宮殿に捕らわれの身になっていた天空の民の娘たちが、外への道が閉ざされた広間へと入ってきた。6人で協力しているとはいえ、小さな手で自分たちよりもはるかに大きな装置を抱え上げている事に大王は二度驚き、カービィは彼女たちがこの場に現れた事に驚いて声を上げた。
「…キミたち、まだ逃げてなかったの!?」
「あなた方プププランドの方々を、フロラルドへと招いたのは、私たちです。その我々が、ここから逃げ出す訳にはいきません」
蔦に覆われてしまったテラスに向けて装置を下ろし、他の娘たちに細かな調整を任せると、リーダー格らしい白い花を身に纏う天空の民が二人へと向き直り、一礼する。
「お前たち…、が?」
ついさっきまでほとんどの時間気を失っていたデデデ大王には、正直、分からないことだらけだった。天空の民は頷き、静かな声で語り始める。
「我々は、この浮遊大陸フロラルドの民。…我らが主クィン・セクトニアが、フロラルドのみならず遠き地表の国々までも征服しようとしていることを知り、その侵略を止めて下さる『勇者』を求めて、古い伝承に謳われるワールドツリーの種に最後の望みを託しました。――私は、その計画の責任者です」
白い花を纏った天空の民はそう言って、カービィの真正面に舞い降りると、深く深く頭を下げた。
「私たちには、自らの王の暴挙を諫める事が出来ませんでした。―――当初の計画とは違ったのでしょうが、ワールドツリーと一体化した事によって、かつての女王セクトニアは地上への侵攻を開始してしまいました。今やフロラルドだけでなく、このポップスター全体の危機……。
……フロラルドの民を代表し、地上の、プププランドの勇者さまに…お願い申し上げます。どうか女王を、…セクトニア様を、止めて下さい……!」
かすかに震える白い花びらを見下ろしながら、カービィは、不思議と穏やかな声音で言う。
「捕まって、閉じ込められたりしてたのに、キミたちはまだあの人のことを『女王様』って呼ぶんだね」
「…それ、は………。」
白い花の娘は一瞬戸惑い、ぎゅっと拳を握りしめた。
様々な想いが、脳裏を過ぎて…… … …
「わかった、行ってくる!」
「――……えっ!?」
突然、あっさりきっぱりした勇ましい声が聞こえてきて、驚いて顔を上げる。
見ると、いつの間に移動したのか、カービィが準備の整った発射装置の上にちゃっかりと納まっている所だった。思わずぽかんとして見送る白い花の娘。
「……相変わらず、人の話を最後まで聞こうとしないヤツだなー…」
仕方ねーなー、とぶつくさ言いながら、デデデ大王が空いている操縦席に座る。発射台の中から大王を振り返り、カービィが、事態を分かっているのかと訊きたくなるような屈託のない笑顔を浮かべた。
「大王! コントロールは頼んだよっ!」
「おー、任せとけ!」
こちらの敵対行為を認めたのか、宮殿を覆った蔦の一部がうごめき、目玉のような姿の花から弾が発射された。即席で作ったとは思えないほど鮮やかな連携を見せて、相手の攻撃を捌き、暴れる蔦を攻略していくカービィたち。
二人の勇姿に、周りで応援していた天空の民の娘たちの声にも、次第に熱が籠もってくる。
そして――――
「……っしゃ! 行ってこい、カービィ!!」
「はぁい!!」
幾重にも重なっていた蔦がついには緩み、露わになった月明かりの空。遠くにそびえる天上の花へ向かって照準を合わせ、天空の民の声援とデデデ大王の号令を背に、カービィは決戦の地へと飛び立った。
カービィを送り出したと同時に、広いテラスはうごめく蔦によって再び閉ざされてしまった。その場に残ったデデデ大王は、発射装置から降りながら、賑やかだった周囲が急に静かになったのに気付いて天空の民たちを振り返る。娘たちは顔を覆い、もしくはまたも外を覆い隠した蔦を見つめて、涙を流していた。
堪えきれぬ嗚咽が、耳に届く。
「…女王様…、…違うのです。わたしたちは、…このような結末を迎えるために、ワールドツリーを使ったのではないのです…。……お許し下さい…」
ほどけた蔦の隙間から見えた、変わり果てた女王の姿。
その身に花を纏う彼女たちにとって、狂える巨大な花と化した今の女王の姿は、耐え難いものがあるのかも知れない。
「…カービィも言ってたが…。お前たち、あの女王のことが本当に好きなんだな」
泣きながら、遥かな月明かりの元へと祈りを捧げる娘たち。その声は、恐怖に支配された者のものではなかった。―――大王はそんな娘たちの姿に、臆病ながらも勇敢に自分を守ろうとしてくれた部下たちの姿が、どこか重なって見えた。
呟くデデデ大王に、リーダー格の白い花の娘は、昔を思い出すようにそっと目蓋を閉じて、再び口を開いた。
「あの方は……私たちにとって、救世主でした」
「… … もうずっと昔…。フロラルド下層に住んでいた私たち『花の民』は、上層に住むチカラ強き『虫の民』たちによって、面白半分に追い立てられ、搾取されていました。
そんな時代に、あの方は、自らが女王として立つ事によって虫の民を統率し、フロラルドに秩序をもたらして下さいました。私たち花の民は喜び、新しき女王様に忠誠を誓いました。
フロラルド全土を、一つの国とすることは容易ではありませんでしたが、セクトニア様は自らの能力を駆使して人心を集め、やがては天空の王国すべての民を統一する偉業を成し遂げられました。フロラルドで最も高き “王の道” に築き上げられた帝都と宮殿は、その偉大なる道のりの象徴…。
……ですが……いつの頃からか、あの方の耳にはどの民の声も届かなくなり、今のような怖ろしい女王様へと、変貌してしまったのです。 … …」
「だけど…わたしたち、見たんです! 女王様が、あの…鏡の前で、ひどく苦しんでらっしゃる姿を……!」
白い花の娘に代わって、桜色の花を身に纏うまだ若い娘が、声を上げた。
いつからか、より強き力を持つ者だけが這い上がれる、そんな凶暴な秩序によって支配されるようになった天空の国。絶対なる女王にとって有益となればよし、そうでなければ、力無き末端ほど安易に切り捨てられる。そんな世の中で『花の民』は、見目麗しい娘たちを女王の身の回りの世話をするお役目に差し出す事により、僅かな平和を保っていた。
それでも若い娘たちにとって、美しき女王のすぐ側に仕えていられるという事実は嬉しい話でもあり、桜色の花の娘たちも、最初は自分たちの女王に強く憧れを抱いていた。―――それが不信感に代わったのは、今からほんの少しだけ前のこと。
その日、宮殿に勤めていた娘たちの二人は、忙しさのあまりの不注意で、女王の私室の奥、入ってはならぬと言われていた厚く重いカーテンの向こうを覗いてしまった。そこには、金色の星と翼の装飾に縁取られた、美しく大きな鏡がひとつだけ置かれていた。
その目映さについ眼を奪われていると、すぐに女王に気付かれてしまった。慌てて伏して非礼を詫びる侍女たちに、セクトニアは意外な程の穏やかな声で、その奥に置かれているモノがどう見えたか、と問うてきた。娘たちは戸惑いつつも、とても美しい「鏡」だ、と率直な感想を答えた―――その途端、セクトニアの表情が一変した。
悲鳴を上げる間もなく、無慈悲な雷が侍女の一人を撃つ。開き始めたばかりだった瑞々しい花びらが、辺りに舞い散った。
致命傷には至らなかったものの大ケガを負ったショックで、その娘の花は未熟な蕾状態へと戻ってしまう。衝撃に倒れた仲間を抱え、恐怖と痛みに震える侍女たちを冷たい瞳で見下ろして、セクトニアは、ふっといずこかへと出掛けて行った。
入れ替わるように、物音を聞いて部屋に飛び込んで来たタランザは、侍女の負った傷を看てやりながら、二人をたしなめた。
「キミたちもおバカさんだねぇ。あれは、セクトニア様の大切な鏡なんだ。とてもとても不思議な力を秘めた、魔法の鏡。下手に近付くものじゃないのね」
奥の鏡について訊ねると、なぜか、どこかうっとりとした様子でタランザは答えた。
突如として怒り狂う女王と、陶酔した表情を見せるタランザ―――恐怖に身を竦ませながらも、女王とその鏡との関係に疑問を抱いた娘は意を決する。ケガをしたもう一人の娘を他の侍女仲間に任せると、娘はその夜遅く、女王が鏡の前に一人きりになる姿を盗み見る事にしたのだった。
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植物系キャラは、可愛く儚く見えて実はとっても逞しいのがデフォルトだと思ってます。pick meしかり。