2013年2月20日

[短編]元に戻って

「元に戻って」ぴくしぶ公開時のもの。最終調整前、若干の修正あり

 カービィ二次創作小説(女性向け/腐向け?)です。

 「あつめてカービィ」ED直後くらいで、ドロッチェ×カービィ。
 カービィが、ドロッチェを大好きになり始めるお話。

(注意)我が家でのカービィは「わかもの」で、普通に喋ります。
 性格は若干男の子寄りだけれど、「性別不明」キャラです。

※ぴくしぶで投稿するにあたり、同時にこちらでも展示しています。内容は同じです。

 趣味に走った作品ですが、お楽しみいただければ嬉しいです。


―――ある嵐の晩、カービィが気付いた『心』とは。



  「元に戻って」  ドロッチェ×カービィ

★★★


――― ピシャァァアアア!!


「…………っっっ!!」


 ―――轟音と、眩しい光。思わず身体が竦んで、カービィはぎゅっと目蓋を閉じた。


「うぅ……」
 少しだけ静かになったのを感じ、そっと布団から顔を出す。小さく見える窓の外に、まだ幾筋かの光が踊っているのが見えて、再び自分の身体を抱きしめた。
 雷が、苦手な訳じゃ、ない。 けど…。

 ――『勇者の心』に導かれ、カービィたちがネクロディアスを倒して、無事に元の姿に戻ることができたあと。ポップスターのポポポアイランズに戻ったカービィは、そこでドロッチェたちと再会し、気が緩んだのか、その直後に倒れてしまった。
 突然の10人への分裂のショックと、その後のドクロ団との戦いは、丈夫なカービィの身体にも、かなりの負担を強いていたらしかった。一眠りした後もどこか上手く身体を動かすことができない様子で、そんなカービィが心配になったらしいドロッチェ団の厚意を受けて、現在も彼らの飛行船に滞在している。
 それから数日後。日暮れ前から曇ってきた空は次第に大荒れになり、グリングランドには珍しい、激しい嵐の夜が訪れていた。
 停泊した飛行船内の客室で布団に包まっていたカービィだったが、その身に、自分でも予想外の出来事が襲い掛かっていた。
 あの時、身体を引き裂いた、ネクロディアスのカミナリ。それを思い出すのか、雷の音や光に、身体中が悲鳴を上げている気がするのだ。いまだ奇妙な感覚の残る身体が再びバラバラになってしまいそうで、同時にあの時の喪失感や無力感までがさまざまと思い出され、眩暈がしそうだった。

「ぽぉぅ……、こんなんじゃ、しばらくプラズマウィスプたちの傍に寄れないかも…」

 プププランドの友人たちにも雷の属性を持つ者はいる。彼らのことを思い出すと、雷が怖いなどとは言いたくなかった。…それに、こんな弱点が出来たなんてできれば絶対に知られたくない友人もいる。

 そう思ってカーテンも閉めずに何とか慣れようとしているのだが、身体の震えは一向に治まりそうにない。カービィはため息をついた。


――― ゴロ… ゴロゴロゴロ……


 また音が大きくなってきた気がする。カービィは布団に潜り込み、精いっぱい目と耳を閉ざした。

 そんなだから、気が付かなかったのだろう。


 ぽん。


「ぴぎゃあああっっ!!??」


 丸めた背中に、布団越しに感じた突然の衝撃。……驚きのあまり、カービィは世にも情けない悲鳴を上げてしまった。

「…っ、お、おいおい…。大丈夫か?」

「ふぇ……ふ…、え…あれ、…ドロッチェ?」

 がくがく震えながら振り返ると、そこにはこの飛行船の主であるドロッチェ団の団長、ドロッチェが、耳を押さえながら顔を引き攣らせていた。
 大きな耳を持つ彼には、さっきのカービィの悲鳴はかなり響いたらしい。耳の先のほうの毛がちょっと逆立っていた。しかしドロッチェは気を取り直すように軽く頭を振り、ごほん、と咳払いをした。

「え…、な、なんで? じゃなくて、えと、なにかごよう…?」

 カービィは布団から出ることも忘れて、混乱した頭でドロッチェを見上げる。ドロッチェは手振りで「落ち着け」と伝えながら肩を竦めた。

「大した用じゃないんだが…どうにも退屈でな。まだ起きているようなら付き合わないかと、誘いにな」

 そう言って、手にしていた小さなケースをテーブルに置く。カービィが反応出来ないでいるうちに、ふっと思いついたように窓に近づくと、開けっ放しだったカーテンを閉めた。
 あ、と思った次の瞬間にはこちらを振り向いて、「どうだ?」と聞いてくる。

「あ、えと、えっと、…うん」

 しどろもどろになりつつ頷いたカービィに、ドロッチェが眼を細め、ククッ、と喉の奥で笑う。意地悪そうな笑みなのに、どこか優しげな眼差しに思えた。
 窓の外からはまだ雷の音が響いてくる。しかしカービィは、不思議と温かな気持ちに満たされ始めているのを感じていた。


 もぞもぞと布団から這い出す。よく見ればドアが閉まったままだったが、そういえば瞬間移動術が使えたっけ、と軽く思い直し、席に着いた。
 ドロッチェが持ってきたのは、宇宙単位で広く知られているカードゲームのセットだった。汎用性が高く、一つあれば様々なゲームが出来るタイプで、その分ローカルなルールも多い。ドロッチェは手馴れた様子でカードを切り、卓に並べ始めた。
 始めてみると、カービィはドロッチェが驚く程、随分マイナーなゲームまで知っているようだった。しかもその大半が「遊んだことはあるけど、詳しいルールは知らない」とのことで、気ままな旅人らしさに思わず笑みがこぼれる。
 ドロッチェも旅暮らしであり、こういった手軽な遊びの知識は豊富だ。お互いに知らなかった珍しい遊び方の情報を交換したりして、即席の卓にしては実に様々な地方色あふれるゲームが繰り広げられた。―――すっかりと興じているうちに、時間は過ぎていく。

「…そろそろ終わるか。随分遅くまで遊んでしまったな」

 あふ、とカービィがあくびを噛み殺したのに気付いたドロッチェが、カードを切る手を止めて言う。カービィは少しだけ残念に思ったが、こっくりと頷いた。
 鮮やかな程に手早くカードは仕舞われ、名残を惜しむ間もなくドロッチェが席を立つ。
「邪魔したな。それじゃ、いい夢を」

 その時になって、ようやくカービィは気が付いた。

「……………!!」

 背を向けたドロッチェのマントの裾を、はしっ、と掴む。

「なんだ、カービィ?」
「あ……」
 突発的に掴んだものの、掛けたい言葉が思い浮かばず、ちょっともじもじしてしまう。

 ―――見下ろしてくるドロッチェの瞳は優しかった。ちょうど、窓の外から聞こえてくる、静かな雨音のように。

 カービィはむず痒いくらいの嬉しさに頬を赤らめながら、にこっ、と明るく笑った。

「―――ありがとう、いっしょに居てくれて」

「…何の話だ? いいから、ゆっくり休めよ」
 とぼけるように言うドロッチェの手が、カービィの頭をふわりと撫でる。カービィはなんだか堪らなくなって、気付けばドロッチェに飛びついていた。
「わっ!? と、おいカービィ……」
「えへへっ♪」
 驚きの声を上げるドロッチェが何かを言う前に、ぎゅ、と抱きついたカービィは身体を離した。溢れんばかりの笑顔で、ドロッチェを見上げる。

「…おやすみなさい!」

 その笑顔に毒気を抜かれたのか、ドロッチェはマントを押さえながら、小さく肩を竦めた。客室のドアを開け、「おやすみ」と一言を残して、去っていく。

 カービィは弾むような足取りでベッドに戻っていった。閉められたままのカーテンに手を伸ばしかけ、途中で思い直してそのまま布団に潜り込む。穏やかで温かな、不思議と幸せな気持ちを胸の中で抱きしめて、そっと目蓋を閉じた。

 ―――あしたはきっと、よく晴れるだろう。きらきらと雫の煌めく雨上がりの朝を思い浮かべながら、カービィは安らかな寝息を立て始めた。



 ―― 雨上がりの空の下を、キミと一緒に眺めよう。



おわり。


――・――――・――――・――

(6月 追記)
 ドロカビにハマりたての頃に書いた、カービィサイドの “きっかけ” になるお話。
 世間が「カービィWii」で賑わってる頃に、ひっそりドロカビに足を踏み入れてました(笑) 実際プレイした順番は あつめて→初代(VC)→参上→Wii、だったかな。
 ほとんど勢いだけで書いてたなぁ…。 カードゲーム(トランプ)の表現を誤魔化してる事に、特に意味は無かったりします。ノリ。(ぇー)

 ぴくしぶで小説投稿にチャレンジしようと思い、同時にこっちにも展示してました。
 物珍しいのか、意外に読んで下さっている人が居てビックリです(笑) すごく嬉しいです。読んでくださった方ありがとう。


 これの続きで、翌日のドロッチェ編(ドロッチェサイドの “きっかけ” )もあるのですが、まだ未完成…。
 ポポポアイランズ編はちゃんと順番に完成させたいな。


――・――――・――――・――