2015年4月17日

風を纏うひと

悠久の風、冒険の旅。
風が運んだ、幾つもの冒険譚。

(注意※カービィシリーズ以外の作品とは無関係です。)


 久々に突発文章。
 少しでも、自分の書きたい物語……ドロッチェとカービィに、近付きたいなと思って。

 自分の中でのドロカビは、「『あつめてカービィ』での再会」から始まります。
 そして「『勇者の心』=11人目のカービィ」であり、元に戻ったあとのカービィは、10人に分かれていた身体と『勇者の心』全員ぶんの記憶を持っている……という設定が前提としてあります。

 きっと私は、「お互いに抱えるコンプレックスを、さらりと解かし合ってしまう恋人たち」が、好きなんだと思う。
 …という訳で、言い換えれば、私の書く(えがく)カービィたちは、いろいろとコンプレックス抱えまくってます。 ……怒られそうなこと言ってるなー。

 ちょっとだけ久しぶりに再会して、二人っきりになれたところ、という場面です。


★☆★ ☆★☆ ★☆★


纏う「風」 遥かなる旅路
願うのは 旅人であること
だから……

なのに、

…どうしてキミは、そんなにも優しいのだろう。

  ……… ……… ………

――「気ままな旅人」で在ろうとして、
  “だから” 気楽に生きられないだなんて、おかしいじゃないか。

 ……いじっぱりな勇者様。



―――『風を纏うひと』―――



「カービィ」
 微笑みながら差し出された手に、自分の手を重ねる。
 次の瞬間には、優しく抱き寄せられて、カービィの身体はドロッチェが纏うマントの中に、すっぽりと収まってしまっていた。
( ――……あ )
 赤色をしたマントに包まれながら、カービィは高鳴る胸の奥へと静かに息を吸い込み、目蓋を閉じる。
( ――…風の匂いが、する……)


 ――彼が身に纏うマントからは、いつも、どこか……遠い星に吹いている『風』の匂いがした。
 ……キミはその鋭い瞳で、今まで、どんな景色を見つけながら歩いてきたのだろう。もしかしたらそれは、ボクがまだ知らない、見た事のない景色なのかも知れなくて。……そんなことを考える度に、わくわくする気持ちが、胸のどこかからあふれてくる。
 キミの纏う『風』を感じるその時、まるで、その『景色』の中にボクも連れて行ってくれているような……そんな小さな幸せを、密かに抱いてしまうんだ。

( ――だから、)

 彼もまた、星空を渡る『旅人』のひとり。
 彼と、自分と。それぞれの旅路を往く事を、そしてその合間にこうしてまた出逢い、しばし同じ時間を過ごすというこの関係を。しあわせだと、感じるから。
 だから、……これ以上の、願い事は。

( ――…「もっと、傍に居て」だなんて、)

 言えない。

( ――…言いたく、ないよ……)

 誰からも、それぞれの自由の旅路を、まっすぐな星の輝きを、奪う訳にはいかない―――奪いたくなんか、ない。

 それは、まるで、見えざる誓いのように。
 心を、戒める。……自分から。


 ……いつの間にか彼のマントを強く抱きしめている事に、カービィ自身は気が付いていなかった。
 赤い色に全身を埋めるカービィを見下ろしていたドロッチェの眼が、かすかに細められた。

「……カービィ」
 静かな声で呼ばれて、カービィが小さく身じろぎして、彼を見上げる。ドロッチェは、穏やかな微笑みを口元にたたえたまま、続けた。
「…オレたちは、またしばらく、ポップスターに厄介になる事にしたよ」
 ドロッチェの手のひらがカービィの腕をそっと撫でて、気付かせないうちに、握り締めていた手を緩ませていく。
 ドロッチェがふいに、クス、と楽しげに笑みを浮かべた。カービィはその笑顔に、眼が惹きつけられてしまう。
「…さいわい。…当分の間は、大きな仕事をしなくても良さそうなんでな。悪さをする予定は今のところないんで、心配してくれなくてもいいぞ。明日は皆に、自由に行動してもいいと言ってある―――…という訳で、」
 寄り掛かっていたカービィを、ひょい、と少しだけ離して座り直させて、宇宙中を渡り歩く盗賊団の団長さんは、カービィを真正面から見た。楽しげな口調のまま、瞳には真剣な光を宿して、カービィの見開いた大きな眼を覗き込む。


「オレも、明日は空いているんだ。
 ―――だから、カービィ。……明日オレと、デートしてくれないか?」


 ……ぽかんとして見上げていたカービィの顔が、一拍置いて、ぼん、と真っ赤に染め上げられた。
 いつしか抱き始めた特別な想いを通い合わせ、触れ合う仲となった今でも、こう改めて正式にデートを申し込まれたりすると、なんだか嬉しいのに恥ずかしいような落ち着かない気分になってしまう……大抵はカービィから彼らのアジトに押しかける事のほうが多いから、余計だ。
 慌てるカービィを、ドロッチェはにこにこと見守っている。その余裕ある態度にちょっとだけ頬を膨らませて、カービィは再び彼の胸へ飛び込み、顔を埋もれさせた。

「……もっ、もちろん、いーよっ。…たっ、…楽しみにしてるっ、からねっ!」

 ぎゅう、と力いっぱい抱きつきながら、素直なんだか素直じゃないんだか自分でもよく分からない、上擦った声を上げる。真っ赤な色が紛れてしまえばいいとばかりに、赤色のマントに熱くなった顔面を押し付ける。ドロッチェが苦笑を浮かべるように、カービィの頭を撫でてくれた。



( ――ああ、もう。……どうして、)

 温かなドロッチェのぬくもりを全身で感じながら、カービィは、滲みそうになった涙を必死で抑えようとしていた。

( ――どうしてキミは。
 …いつも、……ボクが苦しいと思っている時に、嬉しい言葉を、くれるんだろう……)


 身体さえも無くして、慣れない『導き手』としての戦い方に戸惑い、自分でも気付かないうちにくたびれてしまっていた時。
 キミの瞳がボクを見て、声を掛けてくれたことが、どんなに嬉しかったか。
 そっと表面を撫でてくれる確かなぬくもりを、何度、自分自身の身体で感じたいと願っただろう。―――あの時からずっと、キミに……恋をしているのだ。
 無事に自身の身体を取り戻し、キミを自分から抱きしめる事も出来るようになった、今もなお。……いや、時が経つほど、キミを深く知れば知るほど、より強く鮮明に。


 大切なものを決して手放さないまま、それでいてボクのことも諦めてくれもしないで。…いつだって、こんなにも優しく、抱きしめてくれる。
 『風』を引き留める事を恐れるボクを、抱きしめて、教えてくれる……。
 強いひと。
 それは憧れでもあって。
 欲張りなくらいに力強く。風を纏いながら、自由に宇宙を渡るひと。


 キミのことが。

「……大好き、だよ。……」

 愛しくて。

 …愛してる。



  ……… ……… ………


 自分が自分で在り続けるために、自分の抱く “願い” に捕らわれてしまわなくたって、いいんだ、と。

 ――オレは、お前にそう教えて貰えたから。

 優しさに捕らわれて迷ったりなんて、しなくていい。……いつかは、お前もそう気付いてくれるのを、いつまでだって待ってるよ。



☆★☆ ★☆★ ☆★☆

 それぞれの “在り方” が好ましくて。
 お互いがお互いに、敬愛と憧れを抱いている恋人たち。
 その上で、もっと甘えて、頼ってほしい、彼に頼られるような存在になりたいと願っている盗賊さんと。
 自分自身も自由を愛する故に、自分のワガママを押し付ける事を無意識に嫌がる勇者さんと。
 恋人同士なんだから、我が儘を言い合ってなんぼだと思うのですけれどね。


 だいたいは本能に忠実なのに、妙なところで意地を張ってしまう負けず嫌いの性格が影響して、たまに言動がちぐはぐになってしまうカービィと、そんなカービィを見て「また余計なことを抱え込んでるな」と思いつつ、悩み事ごと全部抱きしめてやりたい……という自分の『欲望』にはできるだけ忠実でいようと心に決めているドロッチェ。
 ……と、いう関係性になるまでの二人の話を、きちんと綴っていきたい。
 基本的にドロッチェのほうが先に開き直ると言うか、落ち着いた考え方をするようになるのは、一応は「年の差カップル」という要素を意識してるからです。 …と言っても自分は “カービィは大人だ” と思っているので、「おじさん×わかもの」ぐらいなのですけれども。